システム開発のある種の側面 (スマートフォンアプリ開発と銀行システム開発を例に)

情報関連のニュースを見ていて、個人的に気になるのは以下に関連するニュースである。

その2つに関する話からシステム開発のある種の側面について考えてみた。

スマートフォンアプリ開発

大震災を目の当たりにして――若者の活躍に期待 - 記者の眼:ITproを読んだ。

「アイデア、小グループ、スピード、楽しさ」そんなキーワードを思い浮かべた。

ネットの分野で新しいサービスを生み出すのは、既存のルールや常識にしばられた大企業ではなく、ユニークな発想を持ち、機動力に優れた個人や小さなグループ

自ら何かを生み出す楽しさを知ってほしい

新しいサービスや機能を思いついたらすぐにプログラム化し、実装されたサービスでサービスを始めるかどうか判断

スピード感を理解し、実践してもらいたい

才能と意欲、実行力にあふれた学生は大勢いる。大人がうまく後押しすることで、多くの人に役に立つ、魅力あるサービスをたくさん生み出して欲しいし、今回の困難も一緒に克服していけると信じている。

スマートフォンアプリ開発」の多くの開発はこういったことがベースになっていると思う。

初期衝動と即行動。

銀行システム開発

そういった開発がある一方、社会インフラ、大規模、着実、厳しい(ミスが許されない)開発もある。

みずほ銀行が今トラブルで社会に影響を与えている。

振込(内国為替業務)だけでもまだ懸念すべき事項は多い。給与ピーク、月末ピーク、全銀協義援金振込手数料無料化要請。しかも年度末。

銀行システムの勘定系(基幹系)システムは、ミッション・クリティカルなシステムの代表例だろう。

以前、違う銀行ではあるが、私自身も振込のシステム開発の一部を担当していたことがあった。
開発時「振込システムが落ちたら、死人が出る」という話も数回聞いたことがある。それほどに落ちてはいけないシステム、ということだった。

レビューも、テストも、プロセス、あらゆる申請事も、警備員の監視やセキュリティなど、13年程システム開発してきた今でも、3本の指に確実に入る厳しい開発だった。

処理目標のトランザクション数は今まで経験したシステム開発を考えると、桁が4桁ほど違って驚いた記憶がある。
しかも、UNIX上のJavaでこれだけサバくのか、と。

そのシステムのベースにしているアプリケーションサーバの開発にもその数年前に携わっていたので、それも若干プレッシャーだった。
# Googleやセールスフォースなどの世界企業の処理件数を考えると、今となっては、驚くこともなくなってしまったけど。。

みずほのトラブルは、今回の巨大地震の想定をはるかに越えた震災の影響はあるのかもしれない。
ただ、そういった状況でも落ちてはいけない、そういう状況だからこそ落ちてはいけない、そういうシステムもある。

銀行、特にメガバンクのシステムの影響の大きさを改めて感じている。

補足

間接的に聞いた情報だと、その携わった銀行の振込システムも今のところトラブルは無いものの、運用はこの震災の影響もあって大変らしい。

そういう話を聞くと、今でもあのテストから本番へ移行後までの緊張感を今でも思い出す。

電車の運行状況もままならないが、休みも気軽には取れない開発だし、厳しい世界だと思う。

最後に

スマートフォンアプリ開発のような初期衝動でスピード感を持ってする開発、銀行システム開発のように社会の基盤として絶対にミスの許されないシステム開発、どちらも必要である。

表面的に見れば、スマートフォンアプリ開発は楽しそうで、銀行システム開発は厳しそう、それは確かにある。ただ、結局どちらも、突き詰めていけば、本質的には楽しく、厳しいものだと思う。

どちらもその当事者になればなるほど、レスポンス(批判、感謝)を直接受けることになる。
大変な反面、それが人の経験、体験、つまり人生を濃くしていく、と思っている。
それは開発に限った話じゃないけど。

稔りある人生のためには、自分事にすること。